レル・サンのように⑦
7話 ドロップ二ーターン
陽子はロングボードもショートボードも好きだったが大会ではショートの方に出場していた。
「どうして陽子はショートボードの大会に出るの?」
「えー、だってロングボードはオリンピックの競技無いじゃん!」
「それにロングボードってターンすると失速しちゃうじゃん!」
確かに体格の小柄な陽子にとってロングボードは動かし辛そうだ。
「じゃあ、このDVD観るといいかも」
そう言って私は物置からadriftというタイトルのDVDを持ち出し、それを陽子に見せてやった。
「出演者の紹介をします!
まずはジョエル・チューダー
言わずもがな、この小波でこの動き!
続いてドナルド・タカヤマ!彼のロングボードは世界で1番売れました!
ケビン・コネリー!マジックフィートとは彼のことです!」
私の説明を聞いてるのか聞いてないのか
「あっ!カンガルー!」と陽子が言った。
「カンガルーと言えばオーストラリアですが、続いて陽子に1番見て欲しいのはこの人!
ナット・ヤング!そして、、このシーン!これこれ!このターン!!」
「・・・ウケる!」
「真面目に!ナット・ヤングのこのドロップ二ーターンをすれば失速なんてしない、と思う!」
私の興奮したマニアックな説明に笑いを堪えながら陽子は
「あ!ウミガメだ!」
と関心を示さなかった。
画面上では青い海の中を泳ぐウミガメと、サーフィンをしているレル・サンのドロップ二ーターンが重なり合って映し出されていた。