yoshikame’s blog

世界のサーフポイントを復活させよう

レル・サンのように 最終話

8話 レル・サンのように

その日は台風明けだったが、まだ九州にある新たな台風が私達が住んでいた千葉の方に進路を向けていた。

しかし、それでいてよく晴れた日だった。

私は会社の仕事場で上司から連絡を受けた。



「どうしたんですか?」



「奥様から、とにかく電話に出て欲しい。」



上司にそう言われ会社の電話を受け取った。

受話器に耳を当てると泣いている妻の声がした。




「どうした?」

「、、陽子が、、○○病院にいるからすぐ来て。」





そこから私は断片的な記憶しかない。

病院に着き、案内された病室に警察、消防士、レスキュー隊員、病院のスタッフがいた。

部屋の真ん中には横たわった陽子に泣きながら蹲る妻がいた。

後で聞いたのだが、陽子は友達とサーフィンに行き、サーフィンをしている最中に近くのテトラポッドに嵌ってしまったサーファーを助け出したのだが、その後大きな波がテトラポッドに打ち付け、引き波と共に陽子は、重なり合うテトラポッドの隙間に、入り込んでしまったらしい。




私はそれ以降、陽子にかけた言葉や思い出の、その全てが後悔に変わったのである。









私は松林の中にいた。

松林には若い木々や、樹齢のありそうな木々が整然と並んでおり、その中を通る一本道の先に光る場所へ向かって歩いていた。



松林を抜けた先に青い空と何も無い青い海が広がっていた。

浜辺近くでは波が綺麗に割れており、1人の若い女性と多くの子供達がサーフィンを楽しんでいた。

そして、その若い女性サーファーに見とれていると、彼女は大きく両腕を広げ、深く膝を落とし、素晴らしいターンをした。

彼女の広げた両腕、両足は海の中で悠然と泳ぐウミガメのそれと重なり合い、そしてやさしく彼女のターンを支えていた。